
相続放棄すべきか|3か月の期限と、放棄しても残る管理義務
「借金があるかもしれない」「遠方の実家を管理できない」。こうした事情で相続放棄を検討される方がいます。
相続放棄は有効な選択肢ですが、放棄すれば全部から解放される、というわけではありません。 判断に必要な点を整理します。
- 相続放棄とは、期限は3か月
- やってはいけないこと
- 放棄しても管理義務が残ることがあります
- 次の順位の親族に相続権が移ります
- 放棄する前に検討したいこと
- まとめ
相続放棄とは、期限は3か月
家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人でなかったことにする手続きです。プラスの財産もマイナスの財産も、いっさい受け継ぎません。「実家はいらないが預貯金はもらう」といった選び方はできません。全部か、ゼロかです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申述先 | 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。岸和田市にお住まいだった方なら大阪家庭裁判所岸和田支部(岸和田市加守町4-27-2、南海本線春木駅から徒歩12分) |
| 費用 | 申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便料(郵便切手での納付のほか、電子納付も選べます) |
| 期限 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月 |
この3か月を熟慮期間といいますが、財産の調査が終わらないなどの事情があれば、家庭裁判所に申し立てて延ばすことができます。 借金の有無がはっきりしないまま期限が迫っているなら、まず伸長を申し立ててください。
3か月を過ぎてしまった場合
あきらめるのは早いかもしれません。借金がまったくないと信じていて、そう信じたことに相当な理由がある場合、借金の存在を知った時点から3か月と扱われた裁判例があります。亡くなってから何年も経って督促状が届いた、というケースです。ただし個別の事情の判断になります。督促状が届いたら、すぐ司法書士か弁護士に相談してください。時間が経つほど選択肢が狭まります。
やってはいけないこと
放棄を検討している間に相続財産を処分すると、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなることがあります(法定単純承認)。次のような行為が該当しうるものです。
| 行為 | 補足 |
|---|---|
| 亡くなった方の預貯金を引き出して使う | 引き出して費消すると処分とみなされる可能性が高くなります |
| 不動産や車を売却する、名義を変える | 典型的な処分行為です |
| 価値のある家財を処分する、形見分けをする | 家具や貴金属など、経済的価値のあるものが対象です |
| 賃貸物件を解約して敷金を受け取る | 敷金の受領が財産の処分にあたります |
| 相続財産から借金を返済する | 相続財産に手をつけたことになります |
該当するかどうかは、行為の中身や財産の価値によって個別に判断されます。 家を傷ませないための修繕といった保存行為や、経済的な価値がほとんどない衣類などの整理は、処分にあたらないとされた裁判例もあります。なお、亡くなった方の預貯金からではなく相続人自身のお金で葬儀費用を支払うことは、通常は問題ありません。
特に注意が必要なのが、家の片付けです。 「空き家にしておけないから」と業者を入れて一括処分すると、承認したとみなされるおそれがあります。線引きが微妙なので、放棄を少しでも考えているなら、片付けに手をつける前に司法書士か弁護士に確認してください。
放棄しても管理義務が残ることがあります
ここが最も見落とされる点です。2023年4月に施行された改正民法940条により、放棄した時点でその財産を「現に占有している」場合、相続財産清算人などに引き渡すまで、保存する義務が残ります。
具体的には、亡くなった親と同居していた実家を放棄した場合や、実家の鍵を預かって管理していた場合です。この場合、放棄しても、家が倒壊して隣家に損害を与えれば責任を問われる可能性があります。
一方、遠方に住んでいて実家を占有していなかった場合は、この義務を負いません。 改正前は義務の範囲が曖昧でしたが、この点は「現に占有しているとき」に限定されました。
義務から完全に解放されるには、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、財産を引き渡す必要があります。ただし清算人の選任には、官報公告料や収入印紙のほか、予納金を求められることがあります。金額は裁判所が事案に応じて決めるため一律ではありませんが、実務では数十万円から100万円程度になることが多く、事案によってはそれを超えることもあります。
次の順位の親族に相続権が移ります
相続放棄をすると、その人ははじめから相続人でなかったことになるため、次の順位の人に相続権が移ります。
| 放棄した人 | 次に相続人になる人 |
|---|---|
| 子が全員放棄 | 亡くなった方の父母(祖父母) |
| 父母も放棄、または既に他界 | 亡くなった方の兄弟姉妹 |
| 兄弟姉妹が既に他界 | その子(甥・姪) |
ここでよく起きるのが、知らせないまま放棄してしまうことです。 ある日突然、疎遠だった伯父の借金の督促が甥のもとに届く。その甥にとっての3か月は、督促を知った日から始まりますが、事情がわからず対応が遅れます。
放棄するなら、次順位になる親族に事前に伝えてください。 親族間の関係を壊さないための、実務上いちばん大事な配慮です。
放棄する前に検討したいこと
借金が明らかに多いなら放棄一択ですが、「不動産の管理が負担だから」という理由なら、先に確認しておきたいことがあります。その不動産、売れないと決まっていますか。
「田舎の土地だから」「古い家だから」「再建築不可だから」と、査定を取らないまま価値がないと判断される方は少なくありません。実際には、買取であれば値がつく物件は多くあります。岸和田の旧市街の連棟長屋や、丘陵部の古家も、当社では扱っています。
売れるなら、放棄するより相続して売却したほうが手元にお金が残ります。 放棄すれば、その不動産から得られたはずの代金も受け取れません。査定は無料で、3か月の期限内に十分間に合います。放棄を決める前に、一度数字を見てから判断してください。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 全部かゼロか | 財産を選んで放棄することはできません |
| 期限 | 知った時から3か月。家庭裁判所に申し立てて延ばせます |
| 過ぎてしまっても | 事情によっては認められることがあります。督促状が届いたらすぐ相談を |
| 家財の処分は要注意 | 承認したとみなされ、放棄できなくなることがあります |
| 放棄後の保存義務 | 実家を占有していた場合は残ります |
| 次順位への影響 | 親族に相続権が移ります。必ず事前に伝えてください |
| 管理が負担というだけなら | 放棄の前に査定を。売れるなら相続して売るほうが得です |
放棄すべきかどうかの判断材料として、不動産の査定をお使いください。査定だけのご依頼で構いませんし、結果として放棄を選ばれても問題ありません。相続に慣れた司法書士・弁護士のご紹介も可能です。
