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相続対策は生前贈与と遺言のどちらから?2024年改正後の考え方

伊東 孝之

筆者 伊東 孝之

不動産キャリア15年

サラリーマン時代は不動産会社で勤務、独立後は建物そのもののことを学ぶべく、リフォームを主軸に物件に携わって参りました。広く浅くですが、建築に関する知識も有していますので、単純に不動産を右から左に売却するのではなく、付加価値を見出すことに注力しています。

相続対策というと、まず生前贈与を思い浮かべる方が多いと思います。ただ、2024年1月の改正で暦年贈与の使い勝手が変わりました。そして不動産に関しては、生前贈与が有利とは限りません。 順番に整理します。

  • 2024年に何が変わったか
  • 不動産の生前贈与は税金の面では不利です
  • 不動産があるなら、まず遺言書
  • 対策を考える順番
  • まとめ

2024年に何が変わったか

変更1|生前贈与の「持ち戻し」が3年から7年に

亡くなる前の一定期間内に受けた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算します。これを生前贈与加算(持ち戻し)といいます。この期間が、2024年1月1日以降の贈与について、3年から7年に延長されました。ただし、いきなり7年になるわけではありません。

相続が発生した時期加算される期間
2026年12月31日まで従来どおり3年
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日から亡くなった日まで(3年超〜7年未満に徐々に伸びる)
2031年1月1日以降7年(フル適用)

7年フルで加算されるのは、2031年1月1日以降に発生した相続からです。

なお、延長された4年分(相続開始前3年より前の部分)については、その期間の贈与の合計から100万円まで加算されません。「毎年100万円」ではなく、4年分を通じて合計100万円です。ここは誤解の多い部分なので、ご注意ください。

変更2|相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができた

相続時精算課税は、2,500万円まで贈与税をかけずに贈与でき、その分を相続時に精算する制度です。従来は「使うと少額の贈与でも毎回申告が必要」という難点がありました。2024年から、この制度に年110万円の基礎控除が新設されました。

暦年課税の110万円相続時精算課税の110万円
数え方受け取る人ごと、全員からの合計で年110万円贈与する人ごとに年110万円
相続時の加算持ち戻しの対象(7年以内)加算されない
申告110万円以下なら不要110万円以下なら不要(初年度の届出は必須)
撤回できない

暦年贈与の110万円は、7年以内なら持ち戻されます。一方、相続時精算課税の110万円は持ち戻されません。この違いは大きく、高齢になってから贈与を始める場合は、相続時精算課税のほうが有利になるケースが増えました。

ただし、一度この制度を選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻せません。 初年度に「相続時精算課税選択届出書」の提出も必要です。選択は慎重に、税理士に相談してから決めてください。

不動産の生前贈与は税金の面では不利です

ここが最も重要な点です。同じ不動産を渡すのでも、生前贈与と相続では、かかる税金がまったく違います。

生前贈与相続
登録免許税2.0%0.4%
不動産取得税課税(土地・住宅は3%。宅地は課税標準が2分の1になる特例あり)非課税
小規模宅地等の特例使えない使える(330平方メートルまで80%減額)

登録免許税だけで5倍、さらに不動産取得税が加わります。評価額2,000万円の不動産なら、生前贈与では登録免許税40万円に不動産取得税が加わるのに対し、相続なら8万円です。

さらに、贈与では小規模宅地等の特例が使えません。この特例は、自宅の土地の相続税評価額を330平方メートルまで80%減額する強力なものです。生前に贈与してしまうと、この特例を捨てることになります。

したがって、「相続税がかかりそうだから自宅を子に生前贈与しておく」という判断は、多くの場合で逆効果です。 現金や有価証券の贈与と、不動産の贈与は分けて考えてください。

例外|配偶者への居住用不動産の贈与(おしどり贈与)

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に最大2,000万円が控除されます。合計2,110万円まで贈与税がかかりません。

要件内容
婚姻期間贈与時点で20年以上
回数同じ配偶者からは一生に一度だけ
居住贈与を受けた翌年3月15日までに実際に住み、その後も住み続ける見込みであること
申告贈与税がゼロでも申告が必要
生前贈与加算この控除額に相当する部分は加算の対象外

ただし登録免許税2%と不動産取得税はかかります。また、配偶者には相続税の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)があるため、そもそも配偶者に相続税がかからないケースも多く、その場合はこの特例を使う意味が薄れます。 使う前に必ず試算してください。

不動産があるなら、まず遺言書

相続税がかからない、あるいは基礎控除の範囲に収まりそうな場合、生前贈与よりも遺言書のほうが効果があります。

理由は単純で、もめる原因の多くは税金ではなく分け方だからです。不動産は現金のように割れません。「誰が実家を継ぐか」が決まっていないと、相続人全員の協議が必要になり、1人でも反対すれば手続きが止まります。遺言書があれば、遺産分割協議そのものが不要になります。

自筆証書遺言書保管制度(法務局・3,900円)

自分で書いた遺言書を、法務局に預ける制度です。2020年7月に始まりました。

項目内容
保管の手数料1件3,900円(収入印紙)。保管期間中の更新料はかかりません
検認家庭裁判所の検認が不要になります
安全性紛失や改ざん、相続人による隠匿の心配がありません
手続き本人が法務局に出向く必要があり、代理・郵送はできません

2019年1月からは、財産目録の部分はパソコンで作成しても構わないことになりました。ただし目録の各ページに署名押印が必要で、両面に記載があるときは両面ともです。本文は全文を自筆で書く必要があります。

公正証書遺言(公証役場)

公証人が作成するため、方式の不備で無効になる心配がほとんどありません。証人2人の立会いが必要です。岸和田には岸和田公証役場があります。

手数料は2025年10月1日に改定されました。 インターネット上には旧料金のまま解説している記事が多いので、注意してください。改定後の主な区分は次のとおりです。

目的の価額手数料
500万円超〜1,000万円以下20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下33,000円
5,000万円超〜1億円以下49,000円

これは相続人ごとに、その人が取得する財産の価額で計算して合算します。財産の総額で一度に計算するのではありません。加えて、目的の価額の総額が1億円以下の場合は13,000円が加算されます(遺言加算)。

さらに2025年10月から、公正証書のデジタル化が始まりました。公証人が相当と認める場合、ウェブ会議による遺言公正証書の作成も可能になっています。ただし対応する公証役場から順次となるため、利用したい場合は事前にご確認ください。

対策を考える順番

不動産をお持ちの方の場合、次の順番で考えるのが現実的です。

やること
1相続税がかかるか試算する。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうか
2超えないなら、遺言書を優先する。もめない仕組みをつくることが最大の対策です
3超えるなら、税理士に相談して対策を組む。生前贈与は選択肢の1つですが、不動産よりも現金の贈与が中心になります
4不動産の生前贈与は慎重に。流通税と小規模宅地等の特例を失う影響を必ず試算してから

まとめ

ポイント内容
持ち戻しは7年に延長ただしフル適用は2031年以降の相続から
延長分の100万円控除4年通算で100万円。毎年ではありません
相続時精算課税の年110万円相続財産に加算されません。高齢になってからの贈与では有利になることがあります
不動産の生前贈与税金面で不利。登録免許税5倍、不動産取得税あり、小規模宅地等の特例も使えません
相続税がかからないならまず遺言書。自筆証書は法務局に3,900円で預けられます
公証人手数料2025年10月に改定済み。古い金額の情報にご注意ください

対策を考えるには、まず不動産の現在価値を知る必要があります。査定は無料です。相続対策の資料としてお使いください。税理士・司法書士のご紹介も承ります。

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この記事の執筆者

伊東 孝之

このブログの担当者 伊東 孝之

◇ 保有資格
宅建士、賃貸不動産管理士、米国不動産経営管理士(CPM)

◇ キャリア:15年

司法書士や税理士といった専門家と密に連携し、法務・税務の両面からバックアップする万全の体制を整えております。無料相談無料査定も承っており、初めてのご売却でも安心してお任せいただけます。地域に深く根ざし、ご紹介を通じて積み上げてきた信頼の実績を糧に、皆様の不動産売却を支える最良のパートナーであり続けます。