
遺産分割協議書の書き方|不動産の記載でつまずかないために
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合った内容を書面にしたものです。相続登記、預金の解約、相続税の申告で使います。
決まった書式はありません。ただし、不動産の書き方を間違えると法務局で受け付けてもらえず、全員の印鑑をもらい直すことになります。 ここが最大のつまずきどころなので、重点的に説明します。
- 不動産は「登記事項証明書のとおり」に書く
- 見落とされやすい不動産
- 書式の要点
- 入れておくと後で助かる2つの条項
- 特別な事情があるとき
- まとめ
不動産は「登記事項証明書のとおり」に書く
いちばん多い間違いが、住所(住居表示)で書いてしまうことです。普段使っている「岸和田市○○町3丁目5番12号」という住所と、登記上の土地の表示はまったく別物です。協議書には登記事項証明書に書かれているとおりに写してください。
| 種類 | 記載する項目 |
|---|---|
| 土地 | 所在/地番/地目/地積 |
| 建物 | 所在/家屋番号/種類/構造/床面積 |
| マンション(区分建物) | 一棟の建物の表示(所在、建物の名称)/専有部分の建物の表示(家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積)/敷地権の表示(土地の符号、所在及び地番、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合) |
マンションは記載項目が多く、省略すると通りません。登記事項証明書を手元に置いて、そのまま書き写してください。なお古いマンションで敷地権の登記がされていない場合は、建物とは別に、土地の持分を記載する必要があります。
登記事項証明書は大阪法務局岸和田支局(岸和田市上野町東24番10号)で取得できます。オンライン請求も可能です。地番がわからない場合は、同支局の地番照会(072-438-6530)で確認できます。
見落とされやすい不動産
協議書に書き漏らすと、その部分だけ相続登記ができず、後日やり直しになります。
| 見落としやすいもの | 理由 |
|---|---|
| 私道の持分 | 前面道路が共有私道の場合、その持分が別の地番として登記されています。固定資産税が非課税で納税通知書に載らないことがあり、見落とされます |
| 法定外の水路・里道 | 古い分譲地に残っていることがあります |
| 農地・山林 | 評価額が低く、納税通知書で目立ちません |
| 共有名義の不動産 | 単独名義分と別の綴りになっていることがあります |
確実なのは、市役所で名寄帳を取ることです。 その市町村内で亡くなった方が所有していた不動産が一覧で出ます。岸和田市の不動産は岸和田市役所、貝塚市の不動産は貝塚市役所と、市町村ごとに請求が必要です。
書式の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 署名と押印 | 相続人全員が署名し、実印を押します。1人でも欠けると無効です |
| 印鑑証明書 | 全員分を添付します。相続登記に使う印鑑証明書に有効期限はありませんが、金融機関では3〜6か月以内を求められることがあります |
| 契印 | 用紙が複数枚になるときは、つなぎ目に全員が実印で契印を押します。製本テープを貼り、テープと用紙にまたがるように押す方法が一般的です |
| 作成通数 | 相続人の人数分を作り、各自が1通ずつ保管します。金融機関ごとに提出して回すより、後々の手続きが早く進みます |
| 日付 | 協議が成立した日。全員が同じ日に集まれない場合は、最後に署名した人の日付にするのが一般的です |
入れておくと後で助かる2つの条項
1. 後から財産が見つかったときの取り決め
「本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人○○がこれを取得する」という条項です。これがないと、後から預金や不動産が見つかるたびに、全員で協議をやり直すことになります。実務では広く使われている条項なので、必ず入れてください。
ただし万能ではありません。相続人全員が合意していることが前提ですし、想定外に高額な財産が出てきた場合には、あらためて協議し直す余地が残ります。また、相続税の申告が必要なケースでは、財産が判明した時点で修正申告が別途必要になります。
2. 代償金を支払う場合の記載
1人が不動産を相続し、他の相続人に金銭を支払う場合(代償分割)は、その旨を明記します。「相続人○○は、第1項記載の不動産を取得する代償として、相続人△△に対し、金○○円を令和○年○月○日までに支払う」といった書き方です。
この記載がないと、支払われた金銭が遺産分割によるものだと説明できず、相続人間の贈与と見られて贈与税がかかるおそれがあります。 支払期日と支払方法(振込先など)まで書いておくと確実です。
特別な事情があるとき
| 事情 | 必要な対応 |
|---|---|
| 相続人に未成年者がいる | 親と子が同じ相続の当事者になると利益が相反するため、親は子を代理できません。家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。申立先は子の住所地の家庭裁判所で、岸和田市にお住まいなら大阪家庭裁判所岸和田支部です。未成年のお子さんが2人以上いる場合は子同士も利益が相反するため、それぞれに別の特別代理人が必要になります |
| 相続人に認知症の方がいる | 判断能力が十分でない方が署名した協議書は、後から無効を主張されるおそれがあります。成年後見人の選任が必要になることがありますが、後見が始まると本人が亡くなるまで続き、報酬も発生し続けます。事前に司法書士や弁護士にご相談ください |
| 相続人が遠方にいる | 全員が集まる必要はありません。協議書を郵送で回して、順に署名押印してもらう方法で問題ありません |
遺産分割協議書が要らないケース
遺言書があってそのとおりに分ける場合、相続人が1人だけの場合、法定相続分どおりに共有名義で登記する場合は不要です。ただし共有名義は後々のトラブルの元なので、この方法はおすすめしません。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 不動産の書き方 | 登記事項証明書のとおりに。住所(住居表示)で書くと法務局で通りません |
| マンション | 敷地権の表示まで必要です |
| 最も多い失敗 | 私道の持分の書き漏らし。名寄帳で確認してください |
| 署名と押印 | 相続人全員の署名と実印、印鑑証明書の添付 |
| 必ず入れる一文 | 「後日判明した遺産は○○が取得する」 |
| 代償金 | 金額・期日・方法まで書く。書かないと贈与税のおそれ |
協議がまとまらない原因の多くは、「不動産がいくらになるかわからない」ことにあります。査定という共通の数字があると、話が具体的になって進みます。査定は無料です。売却の予定がなくても、遺産分割の資料としてお使いください。
