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【土地購入前に要チェック!2段擁壁の注意点と安全な不動産選び】

伊東 孝之

筆者 伊東 孝之

不動産キャリア15年

サラリーマン時代は不動産会社で勤務、独立後は建物そのもののことを学ぶべく、リフォームを主軸に物件に携わって参りました。広く浅くですが、建築に関する知識も有していますので、単純に不動産を右から左に売却するのではなく、付加価値を見出すことに注力しています。

こんにちは!不動産に関心のある皆さん、土地を購入する際、目に見える条件だけで判断していませんか?駅からの距離、周辺環境、価格……もちろん大切ですが、実は“見えにくい部分”こそ、住んでからの安心・安全に関わってきます。

今回ご紹介するのは、そんな「見えにくい注意点」の代表ともいえる**2段擁壁(にだんようへき)**について。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、実はかなり重要なんです。この記事では、2段擁壁の基礎知識から、リスク、安全に購入するためのポイントまで、プロ目線でしっかり解説していきます!



◆ そもそも「2段擁壁」って何?

まずは、擁壁(ようへき)という言葉から。擁壁とは、土地に高低差がある場合に、土が崩れないように支える壁状の構造物のこと。斜面を造成して平らな土地にするために設置されることが多いです。

では「2段擁壁」とは? その名の通り、擁壁が1つではなく、2段に分かれて設置されている状態のことを指します。たとえば、道路から1段目の擁壁で1メートル、その上にもう1段(2段目)の擁壁でさらに1メートル……といった具合です。

このような形状は、見た目はスッキリしていることもありますが、建築や安全面で注意が必要なんです。




◆ なぜ2段に分けるの?

「じゃあ最初から大きな1段の擁壁にすればいいのでは?」と思いますよね。

実は、擁壁の高さが2メートル以上になると、建築基準法や宅地造成等規制法によって、構造計算や行政の許可が必要になるんです。

そのため、

  • 高さを2メートル未満に抑えることで申請や設計の手間を省く

  • 造成費用を安く抑える といった目的で、あえて擁壁を2段に分けるケースが存在します。

しかしその簡略化が、思わぬリスクを生むことも……。




◆ 注意したい!2段擁壁の主なリスク

1. 安全性に疑問が残るケースも

2段擁壁は、基本的に上下の擁壁が別構造として施工されていることが多く、構造上の一体性が乏しい場合があります。大雨や地震の際に、地盤の緩みとともに擁壁がズレたり崩れたりするリスクも……。

とくに、旧耐震基準(1981年以前)で施工された擁壁や、設計書が存在しない古い擁壁には注意が必要です。

2. 建築確認の壁

「家を建てたい」と思って購入しても、擁壁の構造によっては建築確認が下りないことがあります。特に、上段の擁壁が**既存不明(誰がいつ造ったか不明)**であったり、設計図や構造計算書が提出できない場合には、行政から建築許可が得られないことも。

3. 管理者が別々になることがある

上下の擁壁で所有者が異なる場合、それぞれの補修や管理がスムーズにできないケースも。例えば、下段が隣地の所有物であった場合、自分では勝手に修繕できません。ひび割れや傾きがあっても、相手方の同意がなければ対応できないのです。

4. メンテナンスコストが増える

単純に擁壁が2つある分、点検・補修の手間や費用も2倍になると考えてよいでしょう。見た目はきれいでも、将来的な維持費用が重くのしかかる可能性があります。

5. 売却時に敬遠されることも

最近では、インターネットやSNSで情報収集を行う買主も増えてきました。擁壁に関する知識がある人ほど、「2段擁壁=ちょっと不安」と感じ、売却に時間がかかる・価格交渉されることも。




◆ 2段擁壁がある土地を購入するときのチェックポイント

では、2段擁壁がある土地は絶対に避けるべきなのでしょうか?

実はそうとは限りません。きちんと設計・施工されており、メンテナンス状況が良好な擁壁であれば、安全性にも問題なく、快適な住環境が得られます。

そのためには、以下の点をしっかりチェックしましょう。

✅ 擁壁の設計図・造成許可の有無を確認

2段ともに、きちんと設計・施工された証明書類があるかどうかは大切なポイント。造成許可図面、構造計算書、確認申請書類などを不動産会社から取り寄せましょう。

✅ 一体構造か、別構造かを確認

上下の擁壁が「一体設計」で造られたものか、「後から分けて造られたもの」かによって、安全性は大きく変わります。できれば建築士など専門家に現地を見てもらうのが安心です。

✅ 擁壁の劣化・ひび割れ・排水状況を確認

  • 擁壁にひび割れがある

  • 上部に手すりがない

  • 擁壁の裏側からの水抜き穴が機能していない などは、劣化や不具合のサイン。放置すれば崩落につながるリスクがあります。

✅ 所有者が誰かを確認

上下の擁壁で所有者が異なる場合、修繕・改修時の合意が難しくなるため要注意。不動産業者を通じて、権利関係を明らかにしてもらいましょう。

✅ 行政・建築士に相談する

市役所の都市整備課や建築士に相談すれば、擁壁の法的な扱いや構造のリスクについてアドバイスがもらえます。




◆ 最後に:土地選びに「安心」をプラスしよう

土地探しや家づくりでは、つい「日当たり」「駅距離」「広さ」「価格」に目がいきがちです。 でも、本当に大切なのは、見えない“構造”や“安全性”を知っておくこと

2段擁壁があるからといって、すべてがダメなわけではありません。ただし、リスクを知らずに契約してしまうと、あとから大きな問題に発展する可能性があるのです。

不動産購入は、一生に何度もない大きな決断。

だからこそ、「この土地、大丈夫かな?」と少しでも感じたら、信頼できる不動産会社や建築士に相談しながら、納得のいく購入を目指しましょう!

将来の安心のために、土地の“中身”をしっかりチェックする習慣を、今から身につけておくことが、後悔しない家づくりの第一歩ですよ。




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